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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日

お嬢様に一人で戻られちまった俺は、サクナ様と広間に戻った。
広間に入るなりサクナ様はおっさん達に捕まってたが、俺ぁ関係ねえ。さり気なく距離を取って、適当にそこらの客に紛れた。それから置いてあった食事を少々頂いたが、食い終わっちまうと、暇になった。
俺ぁ酒も飲めねーし、お嬢様がご婦人席にいらっしゃるんじゃ、特にやる事も無え。
…お嬢様が女臭ぇ社交を繰り広げている間に、手洗いにでも行っとくかね。突然気を変えて帰ると言い出されるかもしれねーし、準備はしておかねーとね。
そう思って一番大きい出入口に歩いて行くと、扉近くに家令のクロウが立っていた。

「こんちはー」
「おや」
「お疲れ様ですー。何か、変わった事は」
「いえ、特には…」
クロウはそう言ってから、俺に向かって頭を下げた。

「先程はお疲れ様で御座いました。当主が無理なお願いを致しまして…」
…固いね。
口うるせーお嬢様が居なくなったのでかなり普段通りに戻ってた俺の口調は、クロウにつられてなんとなくきちんと寄りになった。

「や。お二人には、お世話になってますんで」
サクナ様の頼みも、いつもと違って今回は、無理難題って訳でも無かったからねー。お祝い代わりって奴でさあ。
クロウはそこでふぃっと辺りを見回して、俺に聞いてきた。

「ローゼル様は、今どちらに?」
「ああ。お嬢様は今、ご婦人方の席でご歓談中で」
「左様で御座いますか…」
「お嬢様が、何か?」

「スグリ様が、先程お一人で席を外されたのです。酒を少々召し上がられて居たので付いて行こうと致しましたら、断られてしまいまして…」
おやおや。
ウサギ姫ぁ、酔っ払って一人で抜け出したのかよ。
旦那にあんだけ心配させてるってのに、良い度胸だねー。
男の心配に洟も引っ掛けねえ、無謀な酔っ払い女。サクナ様に対しちゃあ、同情の極みだぁね…
……あ?なんだか身近に似たような例が有った気がするね?
…いやいやいや。
気のせいだな、気のせい。

「…とは言え」
クロウの話ぁ、まだ続いてた。
「基本的に私はここを外せませんので、ローゼル様がもしやそちらに、と…一縷の望みで」
「あー、なるほどー」
クロウはずっとここで門番してんだよな。
しかし、もう新しく来る客ぁ居ねぇだろうし、多少外しても融通は利くんじゃねーか?
帰る客や、抜け出す客を見てんのか?
仕事とは言え、ご苦労なこったね。
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