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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
「いいえ。これは、あの時差し上げた物ですもの、お気になさらないで。…ほんとに、ごめんなさい。助けて下さって、ありがとう」
「いや…詫びなきゃいけねぇのは、こっちの方なんで」
「え?」
俺は、きょとんとした顔をするスグリ様に、頭を下げた。

「若奥様ぁ、お嬢様のお義姉様です。つまりゃあ俺にとっちゃ、身内みてぇなもんです。理由が何であれ、身内がスグリ様にとんでもねぇご迷惑をお掛けしちまったんですから…お詫びしなきゃいけねぇのは、俺の方でさあ」
俺の詫びを聞いたスグリ様は、顔を曇らせた。

「だけど…急に、こんな事なさるなんて…きっと私、気がつかないうちに、何かしてしまってたのよね?若奥様の、お気に障るようなこと」
「そうじゃあ無ぇと思いますぜ」
「え?でも」
そうじゃあ無え。スグリ様にゃあ非は無ぇよ。
何でそうなったんだかは分からねぇが、スグリ様が襲われたのは、たまたまだ。
本来だったら、襲われてたのは、スグリ様じゃ無え。
今ん所確証が無いし、有ったとしてもスグリ様にわざわざ言う様な事じゃあ無ぇから、言わねーけどな。

「調べねぇと分かりませんが…若奥様ぁ、正気じゃ御座いませんでしたでしょ。誰かに、何かされたのかも知れねぇです。例えば、薬とか」
「…何か…」
「その何かが何にせよ、スグリ様のせいじゃあ無ぇです。むしろ、髪で済んだとは言え、傷を付けちまって…スグリ様にもサクナ様にも、何度詫びても詫び足りやせん」
「お詫びなんて…だって、助けてもらって、怪我させちゃったのに」
「あー、ご心配無く。怪しい奴が居ねぇかどうか気にしててくれってなぁ、サクナ様にも頼まれてやしたし、もともと俺の仕ご…………っ!?」

「…このっ…返してっ…!………っぁああ!!」

「ビスカスさんっっ!!」


…………油断した。


…ってのがまず、頭を過った。
あー、やっぱ手加減してたんだな、俺。
甘いね、俺ぁ。

髪の毛以外は無事なまんまでサクナ様んとこにお帰しする為、スグリ様を庇いながら。
一矢報いようとした若奥様を、俺は今度こそ手加減無しで吹っ飛ばした。
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