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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第8章 ビスカスくんの一番長い日
「…分かりやした…分かりやしたから、とりあえず…離しっ…苦しっ…ぐ…」
何をしてたかやっっっっと分かったのか、スグリ様ははっとして手を緩めて下さった。
窒息の危機から解放された俺の口からは、けほけほと咳が出た。

「ごめんなさいっっ!!苦しかった?!」
「や…一瞬ありがてぇ天国見せて貰いやした…」
「天国?!どうしよう、大変」
スグリ様が、おろおろしている。
おろおろしていたと思ったら、はたと何か思い付いたらしい。
突然目を爛々と光らせて、大きく頷いた。

「うんっ!ちょっとだけっ、我慢してっ!!」
「へ?…うええええええ!!!!」
スグリ様は突然俺の体に手を回して、肩に担ぎ上げた。そして、ふんっ!と掛け声を掛けて、立ち上がった。

「うわ、わあっ!?ちょ!止めて下せえ!」
「暴れないでっ!いい子にしててっ!!」
「いや!無理です!無理!」
鋏の刺さったとこは上手く避けられてるが、痛ぇし女に担がれるってなぁ、ちょっと…どうなんだ…

「う…暴れないでってばっ…重たいっ…!」
「いや、ほんと、降ります!降ろして!お願え!」
「…うぐ…」
それでもスグリ様は、しばらく歩いた。
そして、ぎりぎり廊下を曲がった辺りで、立ち止まった。
そこで少し屈まれて俺の足が床に着いたんで、肩からずるずる滑り降りて床に座り込み、壁にもたれた。

「…勘弁して下せえ…お気持ちは有り難ぇですが、逆効果です…」
「ごめんなさいっ!ここに居ても、これ以上手当てとか出来ないと思って……辛かった?」
「…辛い…つうか…」
窒息の危機に続いて、激痛の危機。更に。
「…あんな姿ぁ見られた日にゃあ、お宅の旦那にころ…けほ…」
「…あっ!!旦那っ!!」
旦那って言葉を聞いたスグリ様は、また目を爛々と光らせて、すっくと立ち上がった。

「ちょっとだけ、ここで待ってて!サクナかクロウさん呼んで来る!」
「あー…そですね…おねげぇ…」
「ビスカス?」

一難去って、また一難。
スグリ様が狼狽えて突拍子も無ぇあれこれをなさった末、やっとまともな提案をして下さった矢先に、廊下の向こうからまた一悶着持って来そうな声が聞こえた。
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