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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第12章 猿と刃物は使い様です

「スグリが聞いたら、しばらく凹むな」

 あー……それを言われると、申し訳ねーやねー……。
 スグリ様ぁ見合いの件はご存知無ぇし、お嬢様となるべく早く仲直りして欲しいって、俺に仰ってたからねー。

「…………そうですか……でも、なかなか良いご縁だと、思いますけどねー」

 従兄弟坊ちゃんは今んところ、そんなに悪いお相手じゃ無え。
 お育ちが良く、家柄も釣り合っていて、見た目もかなりの美男子だ。教養とか知性とかも言うヤツも有りそうだし、弱々しくも無え。
 何より、お嬢様が嫌がらねぇで、仲睦まじくいちゃいちゃしてる。初日だって到着早々ベタベタしてたし、その後も、居間でいちゃいちゃなさっていたり、二人で仲良くお散歩されたり、従兄弟坊ちゃんの滞在している客間に籠もって、何やらなさったりしてらっしゃるからねー。お付き合いは、順調そうだ。
 欠点と言やぁ、俺や他の使用人への物言いが、生意気でムカつくって位なもんだ。他の奴らぁ家に仕えてるんだし、俺ぁお嬢様にゃあ仕えて居るが、お坊ちゃまにゃあ俺達ゃ誰も仕えてねーよ。だがそれも、結婚なさったら関係ねえ。見合い相手の御従兄弟様じゃなくて、若旦那様になんだからな。

「今更かも知れねぇが……お前、なんで婚約を断ったんだ」

 本当に正に仰る通りに今更過ぎることを、サクナ様が言った。

「なんでって……有り得ねーからですよ」
「何でだよ。実際話が進んでたんだ、有り得ねぇって事ぁ無ぇだろ」

 いやいや、有り得ねーですって。
 何せ、俺が相手じゃ、家の恥ですからね。
 ……口に出すとどんよりした気分になるだけだから、言わねーけどな、家の恥。どんよりするなぁ、表現が的確過ぎるからなんだけどな、家の恥。

「有り得ねーって事ぁ無ぇって事ぁ、有りませんって。前々からそう言ってんじゃねーですか」
「その前々にも言ったよな。お前が無駄な抵抗しなけりゃ、充分有り得る話だろうがってよ」
「抵抗なんざ、してませんって。御従兄弟様ぁお嬢様にゃあ、悪くねーお相手だと思ってますよ」

 そこで、オレンジを、並べ終わった。
 サクナ様に見せると、いくつかちょいちょいと置き直した後、網を離れた台に移した。
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