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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第13章 首より大事な物が有ります
 お坊ちゃまが何と思ったか予想は付くが、残念ながら、首になんのは、構わねぇんですよ。
 俺なんかがお傍に付いていちゃあ、そりゃあ、ご夫君はお嫌だろうよ。ご結婚と共にお役御免になる事なんざ、ずっと前から覚悟してたことだ。お坊ちゃんに今更ご大層に宣われても、何とも思わねーよ。

 だが、俺に嫌がらせして貶めるためだけに、どうしてお嬢様とのあれこれを、持ち出したりしなきゃならねーんだ?
 お嬢様が知ったら嫌がるだろうし、知られなくってもその言い草にゃあ、お嬢様への敬意の欠片も無ぇだろうが。
 大事なんだろ?愛してんだろ?そんで、奥様になさるんだよな?なんで、そんな言い方が出来んだよ。

 ……このお坊ちゃんで、大丈夫なのか?
 お嬢様は、本当に幸せになれんのか?
 
 俺が何も答えなかったのは、そう思ったせいだ。自分の首は関係無え。お坊ちゃんにゃあ申し訳無ぇが、俺ぁここん家を首になっても、どこでだって生きて行けんだよ。職にゃあ困らねぇだろうし、どんな奴とでもそれなりに上手くやっていけるしね。
 ただ、俺が仲良く出来ねぇ例外が、一つだけ有る。

 お嬢様の敵だきゃあ、俺の敵だ。

 どんなに優れた奴だろうが、良い奴だろうが、身内だろうが、俺が護衛を外れてようが、関係無え。それだけは俺が生きてる限り、一生変えられねぇんだよ。

 ……いやいや。俺よ、ちょいと頭を冷やせ。
 今回に限っては、お坊ちゃんも悪気が有っての事じゃあ無ぇんだろうよ。
 俺が、今まで何かと出しゃばり過ぎてたんだろう。ずーっとお嬢様べったりだったしな。そりゃあ、婚約者様ぁ、気に入らねぇだろうさ。全然気になさらなくても、そりゃあそれでお嬢様に本当に惚れてんのかって心配にならぁね。
 それに、お坊ちゃんは北の出身だ。土地が変わりゃあ、風習も変わる。聞いた話だが、北の方じゃあ夫は妻を人前じゃあ軽く扱うってのが、男らしい奴の条件らしいからな。その分、家ん中じゃあ尻に敷かれるってのが、北方流らしい。
 それこそ、夫婦の事ぁその夫婦しか分からねーって奴だね。

 その朝は、そうやって自分を納得させた。しかし。
 事は、それじゃあ済まなかった。
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