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SSS
第8章 彼を隔つもの

違う、そうじゃない–––
「お母さんは仕事に戻らなきゃいけないから……もしお父さんが先に帰ったら自分で伝えてね」
「…ああ……」
母を見送ることもせず、凪は自分の部屋に入って扉を閉める
そのままズルズルと床に崩れ落ちると、込み上げる不安と嗚咽に身体を震わせた
わざとじゃない
それでも、俺がやった事実は変わらない
一週間後、彼はそのことを身を以って確認した
ガラッ
予鈴五分前、いつもより遅めに登校した凪は教室に一歩足を踏み入れ、そのまま止まった
彼を含む全てが–––時が止まったように静止していた
「……っ」
耐え切れなくなって俯いた凪は震える足で自分の席へと向かう
「よう……」
隣の席に話し掛ける
いつものように。
「あ、ああ……おはよ」
今日は数学の宿題の提出日だ
先週までなら、必ず一人は自分のもとに写させろとやって来た

