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SSS
第5章 叶えられた願い



記憶から消えないのは綺梨が生まれるよりも前の–––幼い数年を過ごした、あの暗闇。

もちろんそれを知るのは長とその妻、真梨子だけだが。



「女が……駄目なんだ」



見せられた数々の本や写真は、今もはっきりと覚えている

その当時は分からなかった背徳感も、思春期を過ぎ歳を追うごとに大きくなってゆく





「……なるほどね」



少し歩いている間に目的の店を見つけ、地下にあるその場所を目指して二人は階段を降りて行く

麗夜の体が僅かに強張った



「君は移動に車も使わないというから、貴族としての自分を認められないのかと思っていたよ」

「それは単に貴族なんていう縛られたものが嫌いなだけだ」



貴族だけではない–––社会のルールだのモラルだの、そんなものに囲われるなんて馬鹿馬鹿しい

それを持ち出したら俺は最初から“存在出来ない”



「……っ」



階段を降りきり、部屋に案内されたところで麗夜はまた身震いした


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