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SSS
第5章 叶えられた願い
「良いお店だね」
コートを脱ぐ由貴はそれに気付くことなく部屋を見回している
「…そうだな。一般市民のエリア内にしては、洒落ている」
麗夜も今度はちゃんと彼に返すと早々に席に着いた
「二人とも、随分早かったのね」
それから真梨子たちが来るまで、そう間は空かなかった
「車じゃなければ私だってもっと早く着いたのに」
学校から直接来たために制服姿の綺梨は愚痴をこぼす
「…綺梨」
「分かってるわよ」
父が諭そうとすると、さっさとそう言って由貴とお喋りを始めた
–––自由に生きたがるところは、兄妹よく似ている
「……」
楽しげに話す娘とは対照的に、真梨子は不安そうに周りを見る
「麗夜、大丈夫?」
「何が?」
蝋燭の火で照らされただけの、薄暗い空間
それは普通の人間なら落ち着くような趣きのあるものだが、同時に地下という閉塞感も強調される