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SSS
第5章 叶えられた願い
「連れ戻しに来たのか」
「そんなことはしない。私だってあの空間は苦手だ。
……弱い自分が思い起こされる」
「……」
恨みなどなかった
いや、あったとしても、その不器用な優しさは十分に伝わっていた
ただ–––
「よく此処にいると分かったな」
「父親だからな。それに……あの業を背負ってしまった唯一の二人でもあるわけだ」
麗夜は口の中で嗤った
そしてまた直ぐに真顔になり、遠くを見つめる
「……」
ただ–––信じられないのは、歪んでしまった自分自身。
在るべき場所から弾き出され、そこに身を置く人々を嘲笑うしか出来なかったあの頃。
長が咎めるのはそんな自分なのだろう
「……良くないところが似てしまったな」
お前も、綺梨も。
長は苦笑した
「縛られるのが嫌いで……私も昔は父に縛られるのが嫌で逆らった。その結果があれだ……。
だが私は結局そんな父親にしかなれなかったようだ」