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SSS
第6章 たとえ貴女に逢えなくても

手から、ケチュア人の特徴ある大剣が滑り落ちる
‘リー……!’
彼の負傷にいち早く気付いた仲間が、彼を味方の陣まで連れ帰った
カレルからの使者が訪問して来たのは、その日の夜のことだった
“この腕はもう……使えない”
馬から降りた瞬間、肩から力なく垂れ下がる右腕
左腕でも戦えるよう訓練はしてきたが、一族一の狩人と呼ばれたあの頃はもう戻らないだろう
“それでもいい……仲間を守れたのなら”
「シェンイー!」
叫びながら恋人の元へ駆けてゆく親友を見るリーの顔には、柔らかな笑みが浮かんでいる
「ハオ!」
二人は抱き合い、人目も憚らず深い口付けを交わした
「ったくあいつらは……若長の前で」
「まぁそう言ってやるな。久しぶりに会えたんだ」
寛大に答えるリーは確かにケチュア人の若長だが、それには二つの意味があった
終わりのないこの大平原には他にもいくつかの部族がある
各部族が一同に会するのが緑溢れるこの季節–––年に一度の逢瀬

