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夢の花片(「柊屋敷の嫁御様」サイドストーリー)
第1章 夢の花片
「…………っ!」
ああ。
またこの夢だ。
夢だと分かって見る夢。
分かって見ていて、結末も知っている。
けれど、最後を変えられた試しが無い。
目を開けて、起き上がる。
久し振りにこの夢を見た。
この前見たのは秋に熱を出した時だから、前より頻度は下がっている。
ガキの頃から見ている夢だが、この夏の終わりからは、登場人物が変わっている。
おまけに、出てくる人間の性格なのかなんなのか、会話が出来るし、話も進む。
もっとも、以前出ていた人間とは、会話が出来る訳は無いのだが。
桃の花の季節に別れた親の声など、憶えていない。
姿すらおぼろげだ。
「んー…」
起き上がったままぼんやりしていたら、冷たい空気が入ったのか、隣の小山がもぞもぞ動いた。
「…どしたの?朝?」
「…いや」
素肌に寒気は冷えるだろう。
隙間を塞ぐように、傍に横になる。
「…ねれないの?……こっちおいでー…」
横になったと同時に頭に手が掛かったと思ったら、胸にぎゅうっと引き寄せられた。
「んー…いいこね…いーこ、いいこ…」
胸に抱き寄せられて、撫でられた。
嬉しい反面、窒息しそうだ。
「ふふー…きょうは、はんたいねー」
「反対?」
質問は胸で遮られて届かない気もしたが、しっかり返事は返ってきた。
「んー…あまえてくれるひ…」
頭にすりすり何かが擦り付けられている感触がしたと思ったら、撫でられていた手がぱたりと落ちた。
「…ふはっ」
胸の谷間から少し離れて息を吐く。
窒息しそうな柔らかな胸の持ち主は、すうすうと寝息を立てていた。
その髪を起こさないように撫でながら、考える。
夢は、いつか見なくなるのか。
結末が変わることはあるのか。
それとも、いつまでもこの結末のままなのか。
先の事は分からないが、登場人物が交替してからの夢の前半は、少しずつ幸せな物に変わって来ている。
「……甘えさせてくれて、ありがとな」
今見た夢の前半だけを思い出しながら、柔らかい体をそっと抱き締める。
二人で桃の花を見て、花片に吹かれて、幸せだけを感じる未来。
そんな日がいつか来ることを願いながら、闇の中でゆっくり目を閉じた。
ああ。
またこの夢だ。
夢だと分かって見る夢。
分かって見ていて、結末も知っている。
けれど、最後を変えられた試しが無い。
目を開けて、起き上がる。
久し振りにこの夢を見た。
この前見たのは秋に熱を出した時だから、前より頻度は下がっている。
ガキの頃から見ている夢だが、この夏の終わりからは、登場人物が変わっている。
おまけに、出てくる人間の性格なのかなんなのか、会話が出来るし、話も進む。
もっとも、以前出ていた人間とは、会話が出来る訳は無いのだが。
桃の花の季節に別れた親の声など、憶えていない。
姿すらおぼろげだ。
「んー…」
起き上がったままぼんやりしていたら、冷たい空気が入ったのか、隣の小山がもぞもぞ動いた。
「…どしたの?朝?」
「…いや」
素肌に寒気は冷えるだろう。
隙間を塞ぐように、傍に横になる。
「…ねれないの?……こっちおいでー…」
横になったと同時に頭に手が掛かったと思ったら、胸にぎゅうっと引き寄せられた。
「んー…いいこね…いーこ、いいこ…」
胸に抱き寄せられて、撫でられた。
嬉しい反面、窒息しそうだ。
「ふふー…きょうは、はんたいねー」
「反対?」
質問は胸で遮られて届かない気もしたが、しっかり返事は返ってきた。
「んー…あまえてくれるひ…」
頭にすりすり何かが擦り付けられている感触がしたと思ったら、撫でられていた手がぱたりと落ちた。
「…ふはっ」
胸の谷間から少し離れて息を吐く。
窒息しそうな柔らかな胸の持ち主は、すうすうと寝息を立てていた。
その髪を起こさないように撫でながら、考える。
夢は、いつか見なくなるのか。
結末が変わることはあるのか。
それとも、いつまでもこの結末のままなのか。
先の事は分からないが、登場人物が交替してからの夢の前半は、少しずつ幸せな物に変わって来ている。
「……甘えさせてくれて、ありがとな」
今見た夢の前半だけを思い出しながら、柔らかい体をそっと抱き締める。
二人で桃の花を見て、花片に吹かれて、幸せだけを感じる未来。
そんな日がいつか来ることを願いながら、闇の中でゆっくり目を閉じた。