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本の夢…
第2章 本の先生
私から離れた先輩の向こうに男の人が見えた。
白のセーターにベージュのスラックスを履いたとても足の長い男の人。
髪がサラサラでメガネを掛けた男の人。
メガネの奥の目がちょっと釣り上がってて冷たい感じがする。
鼻が高くて薄い唇。
なんかカッコいい大人の男の人って感じがする。
「なんだよ?」
先輩がその人にそう言った。
先輩の知り合い?
ぼんやりと考える。
「ここは図書館で本を探すか読む場所です。」
その人が先輩よりも低い声でそう言った。
「うるせぇな…。」
そう言った先輩が図書館から出て行った。
なんかちょっとだけホッとした。
先輩が居ないとゆっくり本が探せると思った。
「ああいう学生と付き合うのはどうかと思うよ。上垣 夢さん。」
その人に名前を言われてびっくりした。
「なんで?」
私の事を?
「僕はこの図書館の司書教諭です。」
「司書教諭?」
「そう、この学校の本の先生ですよ。」
それが塚原 雷生(らいき)先生との出会いだった。
本の虫の私は本の先生という先生の言葉ですぐに好きな先生として頭に登録をされた。
でもまだ、その頃は単純に好きな先生か苦手な先生かの違いくらいで、この後、先生だけで自分の頭がいっぱいになるなんて思ってもみなかった。
それから先輩に会う事はなかった。
結局、恋愛でドキドキとかする意味はわからないままだった。
毎日、図書館に行くようになった。
毎日、先生がお勧めの本を教えてくれるようになった。
「数学が苦手なら、この本で勉強をしてみればいいよ。これは数学が嫌いな子の為に作られた本だからね…。」
「数学は要らないもん…。恋愛の本がいい。」
「ダメです。数学もちゃんと読んであげなさい。」
「えーっ!?」
「恋愛はね…、本で覚え過ぎるとよくないんですよ。」
先生が笑った。
とても綺麗な笑顔だった。