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本の夢…
第9章 海よりも…



テーブルの横には2つのビーチチェアがある。

お互いに座ってテーブルに焼きそばとジュースを置く。


「叔母夫婦は毎年、この浜辺で海の家を開くんだ。」

「そうなんだ…。」


先生の家族の話を聞くと先生がより近くに感じる。

同時に少し不安になる。

私との恋は秘密の恋のはず…。


「叔母は昔から僕に甘くて僕の味方だから…、大丈夫だよ。」


先生が少し海の家の方を見る。

胸がチクリとした。

初めて見えた。

初めて知った。

先生の不安や恐怖。

あくまでも私は生徒で先生は教師だ。

前に先生が私を拐えば犯罪だと言っていた。

先生だって、私との関係を私以上にいっぱい悩んだんだとわかる。

もし誰かにバレたら私は被害者扱いで先生の方は犯罪者扱いになりかねない。

そんな1人で抱えきれないほどの辛い悩みを叔母さんにだけ打ち明けて苦しむ先生は私と海の家に来いと言われたんだと感じる。

焼きそばは始めから2人分の用意がされていた。

初対面なのに叔母さんは最初っから私を先生の彼女だと言った。

涙が出そうなくらいに嬉しかった。

先生の苦しみなんか全くわかっていなかった子供の自分に恥じてしまう。

赤い顔で照れたように先生が言う。


「今日はいっぱい楽しもう…。」


今日1日を目一杯楽しむ。

今日が終わったら私は先生を忘れたようにして大学受験だけに集中をしなければならない。

それが先生の為だから…。

私はもう現実の愛を知った。

今なら1人が寂しいからとか子供っぽい事で泣いたりなんかしない。

大学受験を合格さえすればいい事。

合格をしなければ、私の事で苦しんだ先生をますます苦しめてしまう。


「今日はいっぱい楽しむよ。」


先生に飛びっきりの笑顔で答えた。



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