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本の夢…
第9章 海よりも…
キラキラと光を放つ波がチャプチャプと揺れて気怠い身体に当たって来る。
素敵な笑顔をした先生が崩れ落ちそうな私をしっかりと抱えてくれている。
先生が眩しくて目が開けられなかった。
頭ではわかっているのに…。
先生とは片時も離れたくなくて、今のこの時間を止めたくなる。
「すぐだよ…、夢。ほんの少しの辛抱だ。」
私が先生に必死にしがみつくから先生と海から出られない。
そんな私の気持ちを宥めるように背中を摩りながら先生が言う。
「ホテル…、行こうか?それとも…、行かない方が夢にはいい?」
切ない顔の先生…。
先生の我慢が伝わって来る…。
私を抱きたいと言う言葉は本物。
だけど抱けば私の我慢が辛くなると先生が私の為を考えてくれている。
「抱いて…、先生。ちゃんと割り切るから…。」
泣きそうなのを堪えて先生に答える。
ゆっくりと先生が歩き出して私の背が届く辺りで先生が私を下ろした。
2人で手を繋いで海の家に戻った。
先生の叔母さんが
「もう…、帰るの?」
と冷やかすように聞いて来る。
「やっぱり陽の当たる場所は僕には向いてないんだよ。」
先生が子供みたいに答えるから私はまたクスクスと笑っていた。
「また、おいでね。」
老夫婦に笑顔で言われた。
「是非…。」
来年の夏はもっと余裕のある気持ちで海に来たいと思った。
シャワーを浴びて先生がくれたワンピースに着替える。
「行こう…。」
先生と手を繋いで空色の小さな車に向かう。
その手を離したくないとお互いが思う気持ちが伝わって来る。
海だから、少し車で走ればすぐに『ご休憩』と書かれた看板を上げているラブホテルが何軒か見えて来た。