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写性 …SHASEI…
第3章 新居


沙絵の為に、郊外に新居を構えた。

沙織に続き、僕の姉、両親、嫁いだ姉と次々に亡くなった。

僕は実家を処分し、それでここに新居を構えた。

四季折々の花々が咲き乱れる庭。病弱な沙絵が庭だけで十分に楽しめるようにと…

ただ、黒い高い塀を築き外界との繋がりは断ったが…

思えば、おじさんより歪んでいたのは僕の方で、
沙織を失った悲しみを二度と味わいたくない。

そんな思いが高じて、沙絵を屋敷に閉じ込めるようにして暮らそうと決心していた。

仕事は順調だった。
僕の独特な作風に固定客がいたし、仲立ちする業者もいた。

個展や美術展に出展しないことから、僕の作品を見たければ、買うしかないというバリューもついて、

月に数枚描けば十分に暮らしていけるだけの糧を得ることができた。

それ以上に描きあげて沙絵の将来の為に蓄えてもいた。


「お祖父様…お世話になりました。」

五歳前の子供とは思えない挨拶をして、沙絵は沙織の実家を後にした。

車で3時間の距離、興奮していた沙絵は、新居を楽しみにしていたが、
到着間際にコトリと眠りについてしまう。

僕は沙絵を抱いて、黒塀の門をくぐった。


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