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写性 …SHASEI…
第7章 習慣
翌日、沙織の記念碑を作りたいと沙絵に打ち明けた。
「きねんひってなぁに?」
「お母様のお墓というか、お母様はいないからお墓じゃないんだけど、お母様を覚える場所。」
「お母様を思い出す場所?」
「そうだね。」
「どうやって作るの?」
「ここにある沙織の名前を掘った石を置いて、周りにお花が咲くようにするんだよ。」
「種まきする。お父様、プレゼントのワンピース着ていい?」
「汚れちゃうんじゃないかな?」
「でも、お母様にも見てもらいたいから…」
「そうか、じゃあ着ておいで。」
お母様の居場所を作る。
それはとても大事な場所、お父様が大事な人を思う場所、大事な人が死んでいて会えないと確認する場所。
お母様に会いたいけど、お母様より、大事な人になりたい。
お母様は死んでしまった人で、私は生きていると確認する場所。
「お父様、この種大きいね。」
「球根っていうんだよ。」
「ふうん。」
「球根はね。お花に種が出来るんじゃなくて、球根が大きくなって周りに新しい球根が出来るんだよ。
だから、毎年種まきしなくても土の中で増えていくんだ。」
「早く芽が出ないかなあ。」