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私怨の宴 背徳の凌辱
第1章 戦慄の序章、娘の拉致
ここはどこなのかわからない。地下室であることだけは理解できたが、この世とは思えない恐怖と殺気を与える男たちに囲まれながら美空は文字通り声も出せず、その命令に従うしかなかった。
「裸になれ、全裸だ、もちろんパンティも、な」
高校一年生の少女にとっては、見ず知らずの男たちに成長著しい裸体を眺められる…。死ぬほどの恥辱だろう。だが、それにも増して美空の心を占有しているのは生命の危険だった。
(この人たち何なの? 絶対ヤバイひとだ。ただの変態とか、誘拐犯とかじゃない!)
美空は皮膚感覚で、その捕獲した獲物を嬲るように屈辱を与え、その様子を楽しむことになれ行ったような無数の眼に、逆らえば死あるのみ、というメッセージを読み取っていた。制服の胸元の白いリボンに震える指をかける。紺色の古風だが、品位を感じさせる上着をそっと傍らに置く。男たちの邪悪な視線に射抜かれるような思いを抱きつつ、スカートのホックに手をかけた。

根岸一家が墜ちるこれから地獄絵図の前章は、珍しく平穏な湾岸所での昼休憩時、恭平にかかってきた妻からの着信だった。その日、完全なoffで自宅にいた志桜里からの、努めて冷静にふるまわんとする低い声に、事件に臨む際とは別の緊張が走った。
『あなた、落ち着いて聞いて…美空ちゃんが…誘拐されたらしいの―――』
「ま、まさか、誘拐だなんて、どうして…そう言い切れるんだ?」
もはや首都では日常茶飯事と化した、無数の拉致や誘拐まがいの事件も、その被害者が愛娘と聞かされて、すぐ鵜呑みにはできない。悪戯、ジョーク、いずれも美空の性格に似あわない。何よりも、志桜里が声を震わすには根拠もある筈だ。
『写真が送られてきたの…』
女親である彼女が口を濁すからには、その内容が容易に想像できた。
「すぐに帰る…」
恭平は短く答え、スマホを切ったが、全身が凍り付くように冷たくなる一方、頭だけは異常に熱を帯び、己の鼓動の音が鼓膜を突き破らんばかりに鳴り響いた。
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