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愛の終わりは最高のデートで幕を下ろそう
第2章 二人のラスト・ドライブ

「予約した時に勝手にランチコースを頼んでおいた」
「あの日と同じように?」
「そうさ。あの日と同じようにね」
「この席も?あの日もこの素敵な眺めが楽しめる席だった」
「そうだっけ」
「そうよ。はっきり覚えているもの」
「偶然じゃないか」
「偶然なの?」
「いや。あの日ここに座ったのは偶然だが、今日はこの前予約した時に、絶対にこの席でお願いしますと言ったんだ」
「もう、とぼけなくてもいいのに」
「何だか、こうね、恥ずかしいじゃないか」
楽しい。とても楽しい。すごく楽しくてこれで最後、もう二度とない時間なんだって忘れてしまいそうなほど、夫との時間は楽しかった。
二人で笑って、見つめあって、彼の考えていること、感じていることが全部手に取るように分かる。彼もきっと同じ。それも分かる。
でも一瞬スウッと冷えた意識でこう思う。もう終わりだからこそ、これほど楽しくて幸せを感じることができるのだと。
「美味しい!」
「うん。確かに美味い」
「思い出という飛び切りのスパイスがかかってるけどね」
「ハハッ、そうだね。きみは本当にうまいことを言う」
カジュアルなお店でもちゃんと前菜から始まるコースは、ここのシェフが真面目に取り組んだことが感じられる料理で、どれも美味しかった。
思い出という飛び切りの魔法のスパイスを差し引いても。
「あの日と同じように?」
「そうさ。あの日と同じようにね」
「この席も?あの日もこの素敵な眺めが楽しめる席だった」
「そうだっけ」
「そうよ。はっきり覚えているもの」
「偶然じゃないか」
「偶然なの?」
「いや。あの日ここに座ったのは偶然だが、今日はこの前予約した時に、絶対にこの席でお願いしますと言ったんだ」
「もう、とぼけなくてもいいのに」
「何だか、こうね、恥ずかしいじゃないか」
楽しい。とても楽しい。すごく楽しくてこれで最後、もう二度とない時間なんだって忘れてしまいそうなほど、夫との時間は楽しかった。
二人で笑って、見つめあって、彼の考えていること、感じていることが全部手に取るように分かる。彼もきっと同じ。それも分かる。
でも一瞬スウッと冷えた意識でこう思う。もう終わりだからこそ、これほど楽しくて幸せを感じることができるのだと。
「美味しい!」
「うん。確かに美味い」
「思い出という飛び切りのスパイスがかかってるけどね」
「ハハッ、そうだね。きみは本当にうまいことを言う」
カジュアルなお店でもちゃんと前菜から始まるコースは、ここのシェフが真面目に取り組んだことが感じられる料理で、どれも美味しかった。
思い出という飛び切りの魔法のスパイスを差し引いても。

