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幸せのかたまり
第1章 幸せのかたまり

一緒に住む理由が消え失せてからも、しばらくの間、彼はこの部屋でグズグズしていた。しかし、愛情があろうと無かろうと夕食後の歯磨きみたいに習慣になってしまったセックスのあとに、何気なく麻結美が口にした「いつまでここにいるの」という言葉によって二人とも魔法が解けたように我に返り、すべてはずっと前に終わっていたことに遅ればせながら気がついた。
まるで居眠りしている間に映画の本編が終わり、エンドロールが流れ始めてからやっと目が覚めた時のように。
だから彼が出て行く時も惜別の涙や感動的な台詞はなかった。「さようなら」も今さらな気がしたから、彼が場違いな感じで「じゃあ」と手を上げ、麻結美が「うん」と答えただけでお終いだった。
ドアが閉まってジ・エンド。感動の拍手は無し。
まるで居眠りしている間に映画の本編が終わり、エンドロールが流れ始めてからやっと目が覚めた時のように。
だから彼が出て行く時も惜別の涙や感動的な台詞はなかった。「さようなら」も今さらな気がしたから、彼が場違いな感じで「じゃあ」と手を上げ、麻結美が「うん」と答えただけでお終いだった。
ドアが閉まってジ・エンド。感動の拍手は無し。

