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愛は奪うもの。故に我は貴女を奪う。
第1章 寂しい体
彼女が見せる哀しげな横顔と憂いに満ちた瞳は槙野の胸を締め付け、一緒に仕事をしていた時、槙野は美緒に話しかけることができなかった。

自分が美緒のことを好きだと気付いたのは、皮肉なことに人事異動で美緒と別々の部署になってしまってからだった。気づいたことはまだある。それは美緒と島田との関係だ。彼らが二人一緒にいる時の空気は独特の親密感があり、自分たちはうまく隠しているつもりだろうが見る人が見れば分かる。

いずれ槙野の他にも彼らの関係を悟る人間が現れるだろう。そうなった場合、島田などどうなっても構わないが美緒はどうなる?残念だが悪い予感しかしない。

例え余計なお世話だと怒られても、あの人を助けてあげたい。あの人の笑顔を取り戻すために。

槙野は美緒を追って、駅への道を全力で走りだした。
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