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感情のない世界 // 更新される景色
第3章 君

「ですから新しい物に換えましょう。若い新型をご紹介できますよ」
鈍くなった判断力でも、医師の言葉がしごく真っ当だと理解できる。
僕の思考は合理的にできているから。
でも
「できません」
非合理的で感情的な君は、首を縦に振らない。
「わたしは彼がいいんです。お願いです、彼を治して下さい!」
「それは…」
「治らなくても…っ、せめて、少しでも長く…」
しまいには泣き出してしまった。
昔のようにわんわんと泣くでなく、いたって静かに…目尻から零れてしまう水滴を、手の甲で拭いながら泣いていた。

