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感情のない世界 // 更新される景色
第3章 君
そうだ。僕はもう古い。
本来、僕たちは二十年かそこらで役目を終えるのが自然なのだ。
それは歳を取ることによる見た目の劣化が理由で、僕たちの需要が無くなるから。
なのに君は僕を捨てない。
僕が君と出会ってから、かれこれ三十年近くが過ぎていた──。
「それはできません」
君は医師の提案を突っぱねた。
「彼を捨てるなんてありえません」
「しかしですね…。解決を長引かせたところで、637Sが停止するのは時間の問題ですよ」
「停止…?」
「一年もたないでしょうなぁ」
一年。
僕はこの時、自身の寿命を告げられたのだ。