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感情のない世界 // 更新される景色
第4章 を

「ねぇ、わたしね」
「──僕を捨ててほしい」
君が何かを言いかけて
そして、僕の言葉が遮る。
「僕のことは気にしないで。僕は君といられて…もう十分に、幸せだったさ」
不思議だ。
のろまになった僕なのに、この時だけスラスラと声が出てくる。
まるで初めからプログラムされていたみたいに。マスターに捨てられるこの時のために、最初から。
そうさ。
決まっていた。これが運命。
運命に逆らおうとするから、こうなったんだ。
たった三十年かそこらで壊れてしまう…不完全な僕が、君の側にしがみついた報いだ。
君がくれた景色はあまりに濃くて、鮮やかで
人間ですらない分際で抱え込もうとしたから、その輝きに堪えきれず…コワレタ。

