- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
感情のない世界 // 更新される景色
第4章 を
僕が、僕の都合でデリートしてきた記憶たち。
本当は消えていなかったんだね。
ごみ箱の中に詰め込まれていただけで、本当はずっと僕の中にいて…僕を少しずつ押し潰していたのか。
何年も、何十年も
ずっとずっと…僕を蝕みながら残っていたのか。
とんだ厄介者だ。
“ ふ…、でもまぁ、仕方がないか… ”
消せるわけなかったんだ。
君がいる景色は、君が生きるこの世界の景色は、どんな些細な事だろうと僕にとって価値がある。
君や僕にとって都合の悪い記憶だろうと…
あった事を " 全くなかった事に変える " だなんて、そんな悲しい真似──できる筈がなかったんだ。
“ 悲しい…… ”
そうか、これが、感情なのかもしれないな。
おかげで自分の首を締める結果を招くだなんて、合理的とは程遠い。
僕は僅かでも自分が人間に近付けたような…そんな気になっていた。