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感情のない世界 // 更新される景色
第2章 は
君の笑顔が誰よりも美しく
君の声が最も耳に心地よく
君と話すのが一番楽しくて
たとえ五つ星レストランのフルコースを並べられたところで、君の手料理と比べれば劣るだろう。
僕が君のものである以上、それは揺らぐことが許されない事実だ。
「あ……」
カラン
不意に、持っていた箸が手からこぼれ落ちる。
それを急いで拾おうとした僕の動きは鈍かった。
出来立ての料理を挟んでテーブルの向かいに座っていた君は、僕の鈍さに気が付いた。
「そろそろ消さなきゃ…かな?」
「うん、…そうかもしれない」
「ならご飯食べ終わってから、一緒に消そうね」
「わかった」
代わりに渡された箸を手に、僕は食事を再開した。
君が作ってくれた唐揚げの、肉が冷めて固まる前に。
揚げ物は面倒だと言いながらそれでも挑戦した君の努力を、だいなしにしたくなかったから。