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胸懐の本棚
第1章 胸懐の本棚
レースのカーテン越しにさし入る街路灯の光が、だらりと力の抜けた真紀の白い肌へ斑(まだら)に落ちている。
哲夫はカーテンを開け、真紀の両腕をつかんで乳房をあらわにさせた。
街路灯の光の下に晒され、顔をそむけて恥らう真紀をあらためてじっくりと眺めた。
女の美しさが齢とともに豊潤になっていくことを彼は知った。
『きれいやな』
哲夫のひとことが、真紀の横顔をほんのりと照れた微笑にゆるませる。
その恥じらい方には、天性の性的魅力を感じさせるものがあった。
女を陥落したのか、女に篭絡(ろうらく)されたのか、哲夫はほんの一瞬迷ったが、すぐにどうでもよくなって、うっすらと汗ばんだ真紀を抱きしめた。
腕の中の、生身の、活きた温もり―――。
この温もりに、自分はいったい何を返せばいいのだろう……。
思えば真紀との五年は、互いを知るのに充分な時間だった。
そうならざるを得ない時の流れ、といえるかもしれない。
これからは彼女と生きていく時間を評価していけばいい。
この答えさえ出ていれば、あとはうまく収まりがついていく。