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胸懐の本棚
第1章 胸懐の本棚
『あんたとの再婚話、あの子にしてみたんや。真紀ちゃんにや。
最初は照れ隠ししてやったんやけど、
ようよう聞いてたら、まんざらでもなさそうな感じや。
うちも女やから、皆まで聞かんでも解るわな。
うれしいことやんか。
それで思いきって、お願いします、て頭下げてん。
そやけど、
「社長からはそういう気配を感じひん、
私への気持ちはないのとちゃいますかねェ」
て言いやるから、お願いついでに、
真紀ちゃんからもつついてやって、て頼んだんや。
あの子、「頑張ってみます」て、笑(わろ)てやったんよ。
それも一年ほど前の話やいうのに、
あんたら、なんも進展してへんのかいな』
『進展て。寝耳に水や。
僕の知らんとこで、そんな話になってたんか。
まったく気づかんかった』
姉のお節介には慣れてしまった哲夫も、今回ばかりは不快に感じた。
真紀にしても迷惑なことだっただろう。まともに取り合わなかったとしても、姉に頼まれればおろそかには扱えない話だ。
『ほんまに鈍感な男やわ。女の人に気ィ使わせて。
昔からあんたにはちょっと欠けたとこがあるのや。
それはもうええとして、
なぁ、真紀ちゃんのこと気にいらんか?』
『そういう目で見るようになったら、
仕事にさしつかえるやないか』
良好な人間関係ではあるが、それ以上の何かとなれば話は別である。