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嘘やろ!?
第10章 芸術と科学
「朱音の好きにしろや。」
穏やかに笑うだけの透。
自由を与えてくれる。
その自由が広過ぎると不安になるのだと初めて知る。
隆也が専業主婦という形で自由を奪おうとした事の方が楽に感じる。
自由とは本当の意味では苦しくて寂しいと今更に理解をした。
遼さんが透を自由にしてるから…。
だから透が寂しいのだとわかる。
だけど父親として後ろめたい遼さんは透を自由にする。
生徒として後ろめたい透は私を自由にする。
教師を辞めさせて透に合わせた生活を私にさせるとますます透が後ろめたくなる。
そういう事か…。
寂しさを抱えた人が集まるBar…。
寂しいから千里もあのBarに通って来る。
「透君とはどうなってんの?」
「詳しくはまだ話せん。」
土曜の夜に千里が来たと透が教えてくれたから、ご飯の後は私も店に顔を出し、千里と飲む事にする。
透が学生である事は秘密だから例え千里にでも迂闊に話す訳にはいかない。
「千里こそ、慎也さんとはどうなってんの?」
透から千里がほとんど毎週のようにこの店に来てると聞いた。
慎也さんとの僅かな時間を求める千里。
「慎ちゃん…、多分、無理やもん。いっつもはぐらかされた答えしか言わへんもん。」
所詮は水商売のバーテンダーなんやと千里が口を尖らせる。
「なぁ…、千里、恋愛ってなんやろ?」
「そんなん簡単やん。自分が好きで相手が好きになってくれたら、そこからが恋愛やん。」
「そんな単純か?」
「お互いが相手を好きになって知りたいと思うから恋愛やん。知ってしまって尚且つ一緒に居たいと思ったら結愛みたいに結婚になるんやん。」
恋愛のベテランである千里が胸を張る。
ベテランでも結婚に辿り着けずに迷子になってる千里に妙に同情をしたくなる。