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嘘やろ!?
第10章 芸術と科学
私自身は芸術にはあまり興味がない。
それでも透が観たいというならと付き合って観る事にした。
ポツポツとしか人が居なくて静かな廊下を進む。
うむむ…。
さっぱりわからん…。
抽象派、印象派…。
その程度の違いしか区別がつかない。
タッチや作者の思いやとか言われても全く理解が出来そうにない。
透が足を止めて1枚の絵を見上げる。
聖母子像…。
宗教的絵画が好まれた時代…。
マリアのイメージで天使のような裸の赤子を優しく抱き上げる母親の絵。
「こういうのが好きなんか?」
透に聞いてみる。
「嫌いな奴は居ないやろ?」
透が静かに答える。
母親を嫌いな子は居ないって意味か?
透の顔を見上げる。
「この時代はピラミッド構造と言われるダヴィンチの手法を真似て書かれた作品が多く見られて基本的に誰にでも見易く書かれてるんや。知ってたか?」
透の話は科学的で論理的な事が多い。
「荒井先生に教わったんか?」
「そうや…、科学も芸術も共通するって教わった。」
透が照れたような笑顔を見せた。
「私には芸術はさっぱりや。」
そう言った私の頭をワシャワシャと透が撫でる。
「俺もさっぱりわからん。」
「なら、なんで来たん?」
「わからんから来るんや。わかるもんを観てもしゃあないやろ?」
やっぱり透の考え方ってレベルが違うと感じる。
透との距離を感じて寂しいと思うと透が私の頭にキスをする。
「もっとわかりやすいもんを観に行くか?」
透が私を美術館から連れ出して次に向かったのは水族館…。
ただ観るだけの1日を何故か透がやりたがる。