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嘘やろ!?
第10章 芸術と科学
「なぁ…、今日は結局は何を観たかってん?」
イルカのショーを観ながら透に聞いてみる。
「色々やな。朱音との思い出。自分の将来。」
「透の将来?」
「芸術を観たり自然を観るとやっぱり自分は科学が好きなんやと思うんや。」
「科学?」
「挑戦が出来るんなら最先端プログラムの道を見てみたいと考えてまう。」
「それって…。」
「AIがやりたいんや。」
透が真っ直ぐに自分の道を見てる。
やっぱり国立の大学を狙ってる。
その意思の強さだけを透から感じる。
生徒、教え子、学生…。
そんな透ではなく1人の男として進みたい道を初めて私に語る透の為に自分がしてやれる事を考える。
「競争率…、大変やで…。」
「俺が負ける訳ないやろ?」
ニヤリとして自信満々の透が負けるはずないと思わされる。
困った子や。
苦笑いしてまう…。
そんな透について行けるんか?
自問自答をした。
イルカショーが終わり通路を歩く。
くじ引きがある。
「透…、これ欲しい…。」
なんとなく言ってみる。
「どれやねん?」
「真ん中の大きさのやつ…。」
20cmくらいの小…。
40cmくらいの中…。
1m近い大…。
透がしばらく考える。
「土産物屋で似たようなんがあったから、そっちを買うたるから…。」
「嫌や…、この色がいい。」
「けど、くじ引きやから好きなサイズは選ばれへんねんぞ?」
「そこは透のくじ運やろ?」
いつも自信満々の透に我儘を言うてみたくなった。
土産物屋のイルカは灰色っぽくて普通のイルカ…。
くじ引きのイルカならパステルブルーの可愛いイルカ…。
透が完全に呆れた顔を私に向ける。
「1回ずつ引いて、あかんかったら諦めろや。」
結局は透が私の我儘を聞いてくれる。