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嘘やろ!?
第16章 信頼



「えっと…、つまらないですよね?こんな美術館…。」


学園長が困った顔をする。


「いいえ、好きですよ。こういう芸術も…。」


だって透が好きだから…。

学園長とはほとんど話さずに静かにトリックアートを見て回る。

透とはふざけて笑いながら見て回った。

もう、あの日の事はうたかたの夢が見せた一瞬の幻のように感じる。


「何かありましたか?」


素敵なレストランでの夕食。


「別に…。」


作り笑顔を続ける。


「なら、いいのですが…、僕が無理矢理に楠木先生を上司という立場で付き合わせているような気がして…、嫌なら断って下さいね。」


学園長も仏の顔を崩さない。

立場か…。

教師という立場を勝手な時だけ透に利用をしてた自分に笑ってまう。

透…、今夜も仕事か?

既に暗闇しか見えない窓の外を見ながら透の事を考える。


「飲みに行きませんか?」


学園長の車でそう言われた。


「いえ…、それは…。」


はっきりとした態度をしなければ、また透に怒られると思う。

いや、透はもう私を叱ってはくれない?

迷子の気分や。

吐き気がして気持ち悪い。


「具合が悪そうだから…、ご自宅まで送りますね?」


学園長が心配そうに私を見る。

長かった。

1日がこんなに長いなんて思いもせんかったわ。

フラフラで帰ったのに眠れない。

イルカが恋しいとか考える。

また長い夜が来る…。

助けてや…。

透…。

届かない思いを届けたいと祈るようにしてベッドに蹲る。

1人にせんといて…。

透の水槽から出たら息が出来へんやん。

1晩中、泣く夜を繰り返した。

それでも学校があり、逃げ出す事も許されない地獄を見た。


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