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嘘やろ!?
第16章 信頼
最終日の最後の生徒…。
「遼さんは?」
透は答えない。
「受験やけど…。」
やっぱり透は黙ったまま…。
「なぁ…、自分の将来なんやで?」
「わかっとる。だから楠木先生には関係ないやんけ?俺の将来は俺が決める。誰の為でもないわ。」
もう私の為には何もしないと宣言をされた。
「あのな、透…。」
「帰るわ…。」
待ってや。
気持ちくらい伝えさせてや。
思わず透の制服を掴んでた。
「なんや…?」
冷ややかな目。
恐怖が湧いて来る。
伝えたい言葉が小さくなって消えていく。
「時間をくれや。」
ポツリと透が言う。
その言葉に頷く。
透はそのまま教室から立ち去った。
三者面談の終了…。
クラス28名…。
進路未定1名…。
初めて受け持つ3年生がこんなに辛いんかと感じた。
三者面談が終われば期末テスト。
思ったよりも皆んなが頑張ってくれてる。
専門学校で馬鹿にされたないんやと誰もが必死の顔に変わってる。
透だけが相変わらず。
テストが終わり、後は終業式を待つだけ…。
透が時間をくれと言うてた。
いつ、あげればいいんや?
全く透とは会話をしない日が続く。
終業式…。
職員室で学園長が最後の挨拶をする。
「本年もご苦労様でした。来年もよろしくお願いします。」
今や見慣れた仏の顔。
「楠木先生…。」
学園長から話し掛けて来る。
「はい…。」
「明後日、大丈夫ですか?」
明後日、クリスマスイブ。
シェルター施設の慰問。
「ええ、参加します。」
これを最後にしようと思った。
「では、いつもの時間に…。」
学園長が笑顔のまま職員室から出て行った。