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嘘やろ!?
第18章 受験日
泣きたくなる。
「そんなに1年が難しいか?」
初めて透が赤本を手放して私の頭を撫でて来る。
「進学校とはちゃうからな。」
うちの学園に通う事になる学生達…。
まずは公立を落ちた事に傷ついて、やって来る。
更に落ちたせいで最悪の学校に通ってるという惨めさを抱えてくれる。
そして早くもこれからの人生にやる気を失くす学生達は無気力な学園生活を送る。
無気力だけならまだ良しとする。
そこから社会への不満を発散しようと暴れ出す子が居るから手に負えない。
そういう子には退学の道を与える可能性も無きにしも非ずになるから、うちの学園じゃベテランばかりが1年生を受け持つ。
「退学だけが人生じゃない事を朱音が教えてやればええだけやろ?」
二言目には簡単に学校を辞めたると言うてた元学生の口から、そんな言葉を聞いても説得力に欠ける。
疑いの眼差しを送ると透がキスをして来る。
「出掛けるか?」
2人で堂々と出れるのだからと透が誘ってくれる。
「うん!」
ほんまはあかんけど…。
透は受験前…。
でも、透と出掛けたいねん。
透を恋人として見せびらかしたい時期。
寒い冬に寒くないぞと熱々をやりたいだけ…。
まぁ、出掛ける言うてもお昼ご飯を食べて買い物をして帰って来る程度のお出掛け。
夕食を食べたら自分の部屋に帰るという生活はまだまだ続く。
だけど2人で堂々と出掛けられるいうだけで今は満足をしてまう。
ご機嫌で透と部屋を出た。
僅か数メートルで幸せな心が萎んでいく。
マンションのエントランスに立つ女の子。
佳奈子…。
まだここに透を求めて来てるんや…。
息が詰まりそうになる。
なのに透は私の肩を抱いたまま普通に歩いてマンションのエントランスを出てもうた。