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嘘やろ!?
第21章 コミュ英
ありとあらゆる形でJrのサッカー人生は潰された。
理由は黒人だからだと坂口先生が言う。
「サッカーが上手ければ黒人だから当たり前やと言われ、イタリアに行けるチャンスも黒人だから特別扱いか?と言われ、Jrのサッカーへの思いはそうやって潰されたんですわ。」
声を震わせる坂口先生の怒りを感じる。
「最悪なのはJrの入院中に両親が離婚したんです。」
「なんでそんな時に!?」
嘘やろ!?
そんな時期に普通は離婚で子供を追い詰めるとかありえへんと思う。
「さっきも言いましたが姉が高校にも行かずに引き籠もりになった事、Jrがサッカーを出来なくなった事、それを母親は全て1人で抱えたんです。」
「1人でって…、お父さんは?」
「Jrの父親は日本語が出来ないんですわ。つまり子供達とも全く親子としての会話をした事がないという父親なんです。」
坂口先生の話にいっぱいいっぱいになった。
もう…。
あかん…。
私の脳みその限界や。
そんな壮絶な人生と立ち向かう?
透は覚悟しろって言うてた。
けど、こんな話は私の覚悟のレベルを越えてるわ。
「では…、お父さんとは?」
「年に数回会うらしいです。ただし全く会話が出来ないから適当にお金をくれるだけの父親やとJrが言うてました。」
どうせえ言うの?
ひたすら考える。
そんなJrをどうやって立ち直らせる?
悩む事しか出来ない私に坂口先生が頭を下げる。
「僕の努力が足りなくて申し訳ありません。僕なりにJrにはサッカーに変わる何かを見つけてやろうと努力はしました。けど僕に出来た事はJrをかろうじて高校に進学をさせてやる事しか出来ませんでした。」
坂口先生の言葉に息が詰まる。
その続きを私がするんか?
そんな事が私に出来るんか?
中学校からの帰り道はひたすらため息が出るだけだった。