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嘘やろ!?
第23章 監禁
美術館の静かな廊下を遼さんと歩く。
連休だけあって人が意外と多い。
遼さんは黙ったまま私の手を握って歩く。
ふと聖母画に目が行き立ち止まる。
透と見た聖母画とは違う。
「こういうのが好きか?」
「なんとなく…。」
「わかりやすくて見やすいからな。ダヴィンチの影響で…。」
「誰もがピラミッド構造を真似たから?」
「透か?俺が教えた話やな。」
遼さんが苦笑いをする。
透は全て遼さんの受け売り?
遼さんのコピー?
私が好きだったオリジナルは遼さん?
透が私の中でどんどんと薄れてく。
背筋にゾクリと寒気がした。
透をほんまに失ってまう。
俯いて立ち止まった足が竦んで動けなくなる。
ふわりと私の肩が抱かれて歩き出すように促される。
「飯にでも行こや。」
そこには遼さんの優しい笑顔だけがあった。
難波の街に出た。
大阪の食い倒れの街。
「何食いたい?」
「何でもええ…。」
何でもあるから選びようがない。
気になるのは透の時と同じように遼さんを見る女の子が多い。
だけど遼さんなら私と並んでても違和感がない。
何でやろ?
透よりもチャラいのに…。
透よりも目立つのに…。
透よりも落ち着いて見えた。
不思議な人だった。
だから嫌いじゃない。
なのに愛してると言うには何かが違う。
それは私の中に透が残ってるから?
透が完全に消えた時に遼さんを愛してると思うようになるの?
そしてそれが運命だったと自分に言い訳をするの?
透…。
教えてよ…。
透…。
透に頼る事に慣れきった私の心はまだ惨めに透を追い求める。
そんな私の肩を抱いて遼さんが歩く。
前しか見ない遼さんについて行くしかなかった。