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嘘やろ!?
第4章 三者面談
透と離れるのが嫌やと思うと透がずっと私を抱えて私の髪を優しく撫でてくれる。
なんで私の気持ちがこの子にはわかるんやろ?
そんなに物欲しそうにしてるんかな?
「なぁ、透…、なんで私なんよ?」
「朱音は可愛いやん?」
「それだけかい?7歳も年上のオバハンやで?」
「この学校では朱音だけが初めて俺を起こせ言うたやろ?」
透が照れくさそうに笑ってた。
確かにそれはそうや。
終礼の時に透の付近に居る子に透を起こしてから帰ってくれとは毎日のように言うた。
そうすれば、透にも友達が出来て少しはクラスに馴染むかと思ったから…。
透が寂しい顔をする。
綺麗でどこか儚くて寂しい笑顔。
心臓の音がトクン…、トクン…と聞こえる。
私の心臓の音か?
透の心臓の音か?
ゆっくりと透が口を開く。
「俺…、人生で何回も見捨てられてるからな。毎日、毎日飽きずに俺を起こせ言う朱音なら見捨てたりせん女やと思ったんや。」
透の言葉が妙に重くて痛かった。
ほんまに透の為に起こせと言ってたかどうかの自信がなくなって来る。
もしかしたら、戸締まりの時に透がまだ寝てたら面倒やと思った打算もあったかもしれん。
私はきっと透が思っているような女とちゃうよ…。
透の真っ直ぐで綺麗な目を見てたら段々と自分に恥ずかしくなって来る。
「今日はもう帰り…、それに放課後は残ってたらあかんで…。」
汚い自分をこれ以上は透に見せたくなくて透を突き放すようにして教室を出た。
ただ逃げたかった。
雨はとっくに止んだ。
もう外は真っ暗で透みたいに澄んだ綺麗な月明かりだけが校舎を照らしてた。
あの月明かりがある限り、逃げられないと思った。