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嘘やろ!?
第4章 三者面談
三者面談、最終日の金曜日…。
ラストの生徒…。
この子さえ終われば…。
この精神的苦痛から解放される。
そう思って最後の生徒を睨み付ける。
「なんだよ?」
椅子の背もたれに半身を預けた透がダラけた態度で私を睨み返して来る。
「だからっ!お父さんは!?」
「だからっ!これだっ!」
透が机に置いた紙切れに指を差して叫ぶ。
『委任状…私、吉岡 透の保護者、吉岡 遼(りょう)は一身上の都合により本日は欠席とさせて頂く為、息子の将来については息子本人と担任である楠木 朱音先生に委任致します。 吉岡 遼。』
ご丁寧に捺印まで押してある。
「三者面談を舐めてんの?」
「まさか、印鑑証明も必要やったんか?」
「要らんわ!」
キレてまう。
机に向かって思いっきり両手の拳を振り下ろす。
ダンッ!
わなわなと肩が震える。
「そんな顔はするなよ…、朱音…。」
透の手が私の顔に触れて来る。
「先生や!」
顔が熱くなって透の手から逃げてまう。
「心配はすんなよ。俺は卒業だけすりゃいいんだよ。卒業後に就職が出来る先は3箇所ほどあるし、嫌なら独立をして会社を立ち上げる事も出来る。」
「だけどっ!」
「朱音はちゃんと養ったるて…。だから好きなだけ教師をやって朱音の好きな事だけをしてたらええよ。」
透が綺麗な笑顔を見せる。
その笑顔に見とれてまう。
ドキドキとさせられる。
誰の三者面談よ…。
「明日、待っとるからな。」
透はそれだけを一方的に言うと帰ってしまった。
「ちょっと!?」
もう透の姿はない…。
馬鹿たれ…。
明日なんか行けへんよ。
だって私は教師やもん。
アンタに触れたら見境なくすさかい、絶対に行けへんからな。
そう心に決めた。