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嘘やろ!?
第5章 Barのマスター
当然、遼さんは透の母親に対してブチ切れる。
ふざけんな!透は間違いなく俺の子や!2度と俺らの前に現れるな!
遼さんがそう言おうとした瞬間…。
『悪いけど、アンタも俺の母親じゃねぇよ。俺は孤児だ。親父が拾ってくれた。ただそれだけだ。』
自分の母親を冷ややかな目で見下した透の言葉がそれだった。
真っ直ぐだった透が冷たい人間に変わった瞬間だったと遼さんが言う。
「それまではほんまに真っ直ぐで素直で可愛い子やったんや。」
今度は遼さんの方が泣きそうな顔をしてた。
そのレストランからの帰り道。
透は遼さんに
『親父が拾ってくれた事には本当に感謝してる。』
とだけ言うと、その日から遼さんも遠ざけるようになってしまった。
その日から遼さんは透には何度も俺の息子やとは言ったらしい。
「けど、透の奴は冷めた目で笑うだけやねん。」
遼さんが拳を握る。
その時の遼さんの悔しさが伝わって来る。
DNA鑑定で白黒を付けようと透に言ってやれる勇気がなかった遼さんを賢い透は見抜いてた。
母親は出産をしたから間違いなく本物。
なのに、その母親に捨てられた透。
父親はわからない。
それは中学生というまだ子供の透の心を傷つけるには、どれだけの痛みを伴ったのだろう?
今すぐに透を抱きしめてやりたいと思った。
教師としてでなく、透の女としてでなく、透を好きだと思う純粋な1人の人間として透の事を抱きしめてやりたかった。
遼さんの話はまだ続く。
「人を遠ざけるようにはなったけどな、透は相変わらず優秀な子やった。」
クールで成績優秀、スポーツ万能…。
透のモテ期の到来だった。