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嘘やろ!?
第5章 Barのマスター



マンションの通路の向こうにバーテンダー姿のメガネを掛けた透が立ってる。

多分、なかなか仕事に戻って来ない遼さんを呼びに来たんだと思う。

目頭が熱くなって来て透の姿がボヤけてまう。


「クソッ親父!朱音に何したんや!」


透の怒鳴り声が聞こえる。


「何って…、せっかくの美人先生やから透のお母さんになってくれって頼んだだけや。」


茶化すような遼さんの答え。


「ふざけんな!朱音は俺の女や言うたやろ。」

「そうみたいやな。先生には透にベタ惚れやから言うて振られたわ。」


遼さんが笑いながら私の背中をドンッと押す。

涙で前がよく見えないままヨロヨロと前に進んで透にモロにぶつかった。


「朱音…、なぁ、朱音…。大丈夫か?」


私を抱きかかえながら、何度も涙を拭って透が心配そうに顔を覗き込んで来る。


「今日はもう仕事上がってええからな。サボった分は俺が働くわ。」


そう言った遼さんが手をヒラヒラとさせて店の方へと消えた。


「透ぅ…、えぐっ…、透ぅ…。」


透にしがみついて泣いてやるしか出来んかった。

傷ついた透を抱きしめてやりたかったのに私の方が透に抱きしめられてる。


「また顔がパンダになっとる。」


透が呆れて私を部屋に連れて行く。


「風呂に入ろや。飯は食うたか?後で店からなんか持って来るからな。」


透が子供にするみたいにして私の服を脱がせて行く。

ただ透にされるがまま。

どうしていいかわからない。

透が好き…。

遼さんの話を聞いた今は前よりも透が好き。

透だけを自分のものにしたいと思うのに、やっぱり自分は教師なんやと考える。

だから涙が止まらない。

透が私を好きやと言えば言うほど、感じれば感じるほど透とは距離を置かなければと思うから涙が溢れて止まらない。

風呂場で透が私の髪を洗う。


「朱音は寝る時に何を着てんねん。」

「パジャマ…。」


泣きながらそう答えた。


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