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嘘やろ!?
第6章 デート
うちの前に着くと透がキスを繰り返す。
今度は私の方が透の服を握りしめて離れたくない気持ちをぶつけてまう。
透にはそれがちゃんとわかってる。
「約束やから、努力はしてくれよ。」
そう言って私の頭をポンポンと軽く叩くと私を離すような態度に変わる。
私が帰りやすいようにしてくれる。
何も言わずに車から降りる。
マンションのエントランスに向かうと背後で車が立ち去るエンジン音が聞こえる。
胸が締め付けられたように痛む。
もう一度、透の部屋に向かって駆け出したくなる。
教師なんか辞めたるから透のそばに居させて欲しいと透に伝えたい。
でも、それは私のエゴ…。
いくら透が大人びていても透はまだ高校生。
社会にすら出てない子の将来という数ある可能性の選択肢を私が狭めた挙げ句にその道を摘んでしまう事だけは許されない。
私は教師という立場やから…。
自分の部屋でシャワーを浴びて冷たいベッドに横たわる。
透…。
1人のベッド…。
透の温もりのない夜がこんなに辛いんやと初めて感じた。
翌朝はぼんやりと起きた。
学校や…。
気怠い身体を起こして熱いシャワーで目を覚まして気を引き締める。
コンビニで栄養補助食のゼリーを買い、それを飲みながら通勤電車に乗る。
心は嫌がっているけれども自分にしっかりしろと言い聞かせながら教師という仮面を被りいつものように学校へと向かう。
「わぁーっ!先生…、今日は可愛いやん?」
正門を抜けると黄色い声で声を掛けられた。
「そうか?」
悪い気はしなかった。
メイクに熱心な沖田さんからの褒め言葉…。
こういう何気ない一瞬が教師をやってて良かったと思う瞬間だから…。
今日は少しゆったりとした七分袖の青と白のストライプシャツ…。
袖に花柄の細やかな刺繍が入っている梅雨時期のお気に入りの服。
動きやすい紺色のパンツと合わせるとちょっと落ち着いた大人のいい女に見えるファッション。