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嘘やろ!?
第6章 デート
教師として自分の生徒にはそんな大人にはなって欲しないと思う。
透や沖田さんにも胸を張って社会に出て欲しいと願う気持ちが強くなる。
「例えばさ、かなりキツい話だけれど1年間をアルバイトとかして自分で貯金をしてからファッションの専門学校に行くという道もあるよ?」
「アルバイト?」
「うん、その代わり、他の人よりも1年遅れてのスタートだからかなり大変な覚悟が必要になるけどね。」
夢の大切さと社会の厳しさの両方を沖田さんにはちゃんと教える。
沖田さんが真剣な顔で考え込む。
私は沖田さんをブスだと感じた事がない。
寧ろ、うちのクラスでは可愛い方だと思う。
それだけ熱心に自分を可愛く見せるメイクの勉強を頑張って来たのだと思うからこそ、それを活かせる後悔をしない未来に進んでくれればと考える。
「後は保護者の方としっかりと話し合いなさい。誰の将来でもなく自分の将来なんやから後で後悔をしない道を選ばないとダメよ。」
「うん、もっかいオカンと話をするわ。先生…、ありがとうな。」
沖田さんが教室に向かって笑顔で走り出す。
その真っ直ぐな笑顔に嬉しさと後ろめたさを同時に味わう。
嘘つきやな。
私って…。
自分の将来やから?
自分自身の将来もろくに見えていないくせに、人にそんなお説教をしとるとか笑っちゃう。
なんで私の新しい恋の相手が透やったんやろ…。
もし透やない男やったら、自分の将来に対してもっと違う気持ちで居れたのに…。
女として隆也に可愛くなかった報いか?
恋愛の神様の意地悪か?
だけど今も私は透にも可愛くない女やで…。
やっぱり透とは距離を取ろう。
透の将来を私が左右する事だけは許されへん。
今は透にとって将来に向けての大事な時期や。
教室の窓を睨み付けて、そんな決心をした。