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嘘やろ!?
第7章 妖怪退治
披露宴会場の天井からゴンドラに乗って降りて来た新郎、新婦の姿がスポットライトに照らされてはっきりと見えて来る。
地味な男と地味な女が満面の笑みを浮かべて仲良く腕を組みながらゴンドラから降りて来た。
真っ赤なドレスにピンク色のタキシード…。
しかも式場の係の人がビデオ撮影をしてるから、間違いなく派手な夫婦漫才師が今から漫才を披露しますと言うても全く違和感を感じない。
「結愛たん…、ヤバすぎる。」
千里は結愛の立場をお構い無しにひた笑う。
塗り壁とネズミ男はお互いで顔を見合わせて唖然としとる。
会社の人達がいる席では皆さんが口を鯉のようにパクパクとさせてる。
多分、社内でも普段は和やかな地味カップルの披露宴にこんな派手な演出があるとは誰もが思うてなかったのだろうと感じる。
自分の失恋にいじけてんと、もう少し真面目に結婚式のドレス選びとか結愛に付き合ってやれば良かったと罪悪感と後悔が私の中で生まれた。
それまでも結愛は本当に幸せそうな顔をする。
空気を読むのが苦手な結愛は笑顔だけは絶やすなと言われた披露宴を必死に笑顔だけで乗り切ろうとしてんのが伝わって来る。
だから来客の誰もが派手な夫婦に見慣れて来ると、これも思い出の1つだと言わんばかりに穏やかな笑顔でこの若い夫婦を見守ってた。
披露宴が無事に終わった。
「いやー、まいったまいった…。あの披露宴はほんまに一生の思い出やわ。」
千里がまだゲラゲラと笑ってる。
結愛はこれから新婚旅行…。
だから私は千里と2人で今は披露宴の帰り道のはずだったのに…。
何故か今はタクシーの中で千里と私、私の隣にはネズミ男が座ってる。