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白濁の泉
第1章 始まり。
翌日、私は夕方近くまで眠ってしまった。
昼過ぎ頃から何度も起こす妻を後目にうたた寝を繰り返し、私はやっと泥の様な眠りから覚めた。
夕べの深酒と、官能的過ぎるタクシー車内での猥褻行為で疲れ果てた思考をゆっくり働かせなから起き上がり、リビングのソファーに腰かけてタバコに火をつけぼんやりしていた。

千春は何時に起きたのか既に家事の殆どを終わらせており、夕飯の仕度前に一息入れているという雰囲気だった。

『もう~いい加減にしてよね!今、何時だと思ってるのよ!』

私より酒に強い千春は、まったく気だるさもない様子でマグカップに入ったコーヒーを片手に寛いでいた。
そして、唐突に昨晩の友人との話をきりだしてきたのだった。

『ねぇ、昨日の米沢君の話 覚えてる?!』

『はぁ?』

『私に200万の価値があるって話』

『あぁ、あの話ねぇ・・、そう言えばあの野郎酔った勢いでいつもの調子のいい事言ってたなぁ・・・』

『アパレル通販やりたいんだよね』

『はぁ???、お前の言ってる事の意味がわからん!!』

『だから! 資金稼ぎたいなぁ、って思ってるのよ、どう思う?』

『はぁ~???、本当意味がわからん??』

『だってあなた変態だし、普通の旦那とは違ってそう言うの平気じゃない?寧ろ興奮するんじゃないの?』

千春はそういいながら笑顔を浮かべてさえいる。
私は一瞬、酔ってまだ夢の中にいるのかと思った。
しかしそれは現実で、そして妻が私の性癖を見抜いていた事への気まずさと恥ずかしさが込み上げ私は挙動不審に目が泳いでいただろう。

『アホか?!あんな話を本気にするなよ!』

『じゃ確かめて見てよ、米沢君ったら帰り際のタクシーに乗る前にも選挙の候補者みたいに私の両手をガッチリ包んで握手して千春ちゃん出演オファー宜しくねっ!!って言ってたんだから!!』

私は暫く言葉が見つからなかった。
いつからこの性癖がバレていたのかと思いを巡らせ動揺を隠せない私を置き去りに千春の話は続いていた。

『で……俺が米沢の野郎にあのオファー本気か?って確認するのか?!』

『そう。』

『マジかよ……』

私はまったく本気にしていなかったが、千春の頭を冷させる為にも米沢に電話をかけ、それとなく真意を確かめる事にした。
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