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きっかけは映画館
第15章 これはデートですか?
こうやって、何度目かの出発。
段々慣れていくのか、ヒジオにギュッとしがみついて、
ヒジオの心音みたいにエンジン音を感じて、
心地好い。
いや、最初から心地好かった。
バイクも、ヒジオの映画館での愛撫も…
ヒジオが言うように、相性ってあるのがわかる。
裕司とも相性は悪くなかったと思う。
でも、ヒジオとは…もっと相性がいいと思う。
裕司しか知らないけど、彼氏とか肉体関係とかじゃなくても、ちょっとした仕草、物を受け渡すときに偶然触れた指…
そんな所で、嫌悪感が沸く人、好感が持てる人…
肌で感じる本能的な相性っていうものがあるのはわかる。
そして、ヒジオとは相性がいいと…体が知っている。
ヒジオが、『繋げればわかる』っていうのも、わかる。
裕司とは学部からゼミまで一緒で、グループで長く一緒にいるうちに、好きだって気づいた頃に告白されて付き合い始めた。
ヒジオとは突然で、どうこう思うべき相手じゃないって出会い方で、好きか嫌いかって感情も生まれる間もなく告白されて…
ヒジオはソーシャルアドバイザーだけあって、分析力や交渉話術に長けている。
人間、好きと気付く前に、『好きかどうか』の確認なんて出来ない。
『嫌いか、嫌いじゃないかどうか』の確認しか出来ない。
だから、他に好きな人が現れるまで、もしくはヒジオが嫌いだとわかるまで、付き合ってみる。
拒否の出来ない申し込みだった。
ヒジオは、そう言えば断れないとわかってて、申し込んだんだ。
ヒジオは、私よりも私をわかっているのかもしれない。
繋げればわかる…かもしれない…
でも、別れたばかりで、すぐに他の人となんてあり得ない…
って、私が考えてるのも、ヒジオはわかってる。
だから、家にも上がらない宣言だ。
私の裕司への気持ちが整理つくまで待つと言うのだ。
お手上げだ。