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きっかけは映画館
第15章 これはデートですか?
「どうする?今は多分誰もいないみたいだけど…
今なら、ちょうど、夕焼け空と海が見れるよ?」
「入ってみる。」
ちょっと不安気な麻里絵ちゃんに大判のバスタオルを見せてあげる。
「昨日、麻里絵ちゃん用に探して買った新品だから…」
そりゃ俺だって見たことない麻里絵ちゃんを他の奴になんて見せたくない。
だから、特大で厚手のを探したんだ。
「ありがとう、ヒジオ。」
で、荷物をポケットにしまってそれぞれの小屋へ、別湯だけど解放感抜群だから、一緒の景色を見て話せるんだ。
別々の入口から入って、汗を流して、湯船の小屋に移動する。
ギギッ…
しばらくして麻里絵ちゃんが小屋から出たのも判るくらいのひしゃげた扉。
チャプン…
麻里絵ちゃんが入ったみたいだ。
「麻里絵ちゃん?」
「うん…」
「浸かった?」
「うん…」
「どう?」
「気持ちいい…」
「最高〜だろ〜」
「ちょっと恥ずかしいけど、海も空もお風呂も独り占めしてるみたい。」
「うん…最高〜だ。」
「夕日はないんだね。」
「残念ながら、東伊豆だからね。」
「じゃあ…朝日は見れる?」
「ああ、考えたことなかったよ。夜明け前に出発するのもありかな。」
「じゃあ夏になったら…」
「オータムフェアの開幕祝いだな。」
すぐ隣で麻里絵ちゃんが風呂に入っていると思うと、ドキドキしたけど、清々しい気分になれたんだ。