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きっかけは映画館
第15章 これはデートですか?
休憩ばかり取らせたら、ヒジオも疲れちゃうと頑張るけど…
しがみついてるつもりが寄りかかっていて…
気持ちいい…
たまにヒジオが手をトントンとしてくれるのも、眠りを誘う。
『起きて?』って合図だから、ヒジオのお腹をトントンって返すけど…
段々それが面倒になってくる。
信号待ちの度に振り向かれて、背中を押されてヒジオに寄りかからされる。
だから、くっついたら、温かくて、気持ちよくなっちゃうのに…
やっぱり疲れてたんだろうな。
麻里絵ちゃんが頑張っているのは分かるけど、コツン…コツン…、メットが当たる。
まだ、グッと深く寝てないし、グラッと揺れたり離れたりしないから大丈夫。
帯と袖で括り付けてあるから…
ただスピードは落として、カーブも慎重に、都内までもう少しだ。
いつものペースなら、すり抜けていく信号も、逆にタイミングが掴めない。
そんなで、信号で無理に止まった時だった。
ゴツン…
ってぇ…
麻里絵ちゃんが少し大きく揺れて当たった。
トントントン…トントントン…
麻里絵ちゃんが合図をくれるからメットを開けて振り向く。麻里絵ちゃんのメットも開けた。
「ヒジオ、ごめんね。また、寝ちゃってた。
でも、今ので起きた。
見て、テイルランプが川みたい。」
信号の先を進む車のテイルランプが道路の傾斜とカーブで川のようだった。
「麻里絵ちゃん起きたなら、川を突っ切るよ。」
「うん…」
流れる川を突っ切れば、更に光が流れる。
麻里絵ちゃんは、多分、綺麗とか言ってるんだと思う。俺の腹で結ばれた袖の中で、指が動いてた。