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きっかけは映画館
第16章 ハロウィン
何だと?…優希ちゃんは、上司への報告みたいに、ヒジオに話して…
ヒジオはそんなことも…
いや、連絡すら寄越さずに…
って………
「土方さん、良ければライン交換しませんか?」
「ああ、構わないですよ。」
ちょっと、ちょっと、ちょっと〜
「優希ちゃん…」
「どうしたんですか?先輩?」
「あの、土方さんはお取引先の方で、ご迷惑を…
「間宮さん、商談の時にも、何かあったら連絡下さるよう話したのは、私ですし、
企画が上手くいけば、わが社との取引が成立する。
頼っていただいて一向に構わないんですよ。」
と、ヒジオと優希ちゃんはラインの交換をしている。
とくに、取引先の人と個別に連絡してはいけないという社の規定があるわけではないし、私がそれを止める理由はないのだけれど…
「あ、土方さんのビールも来たことですし、乾杯しましょ?」
う、あ…
出遅れると、ヒジオと優希ちゃんは乾杯をしている。
「ほら、間宮さんも…」
って、ヒジオ、調子に乗りすぎ。
二人が合わせたジョッキに遅れて合わせたが、
日曜日のお出掛け以後、仕事の忙しさにかまけて考えないようにしていたヒジオ問題が勃発する。
こんな風に平日に飲みに行くなんて、出来るとも思ってなかった。
考え事…って、すぐ隣のヒジオの事だけど…
をしている間にも、ヒジオと優希ちゃんはメニューを一緒に覗きこんで、ツマミを選んでる。
私は乾杯で口を着けたビールをそのまま飲んでいた。
「さて、それで企画の方はどんな状況なんでしょうか。」
二人でさっさとメニューを決めて、追加オーダーを済ませたヒジオが口火を切る。
「メールでお知らせしたように、ハロウィンの起源はヨーロッパなのに、宗教的問題もあって、収穫祭に変貌して、別の逸話や行事に分散してしまい、ハロウィンとしてお祭りを集約、確立させたのはアメリカなんですよ。
だから、ヨーロッパのハロウィンは無いんです。」
「う〜ん、起源となっているのに、残念だねぇ。」
「ヨーロッパのハロウィンと銘打ったら、詐称になっちゃいます。」
「確かに…」
そのまま二人は話し込む。私だけ蚊帳の外なのに苛立っていた。