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きっかけは映画館
第16章 ハロウィン
「そしたら物販系も小物なら取り入れられますね。
ちなみに、優希ちゃん、彼氏をそろそろ呼んだらいいんじゃないですか?
待たせてるんでしょう?」
「へ?」
やっと会話に加われて、フェアの話も急展開を迎え、もうちょっと煮詰めるべきだと思ったところで、ヒジオから優希ちゃんの彼の話。
どちらからその話題に触れたのかわからないが、会社のパソコンで、そのやり取りをしたと言うことだ。
「いや…ね、間宮さん。優希ちゃんと今日の話になった時に、彼氏が妬きもち妬かないか?って話になって、
どちらかというと、優希ちゃんがお世話になっている間宮さんと会いたがっていると伺いまして、
1人で先に家に帰るのもなんだし、仕事の話が終わったら、是非ご一緒しようとなったのですが…。」
「麻里絵先輩、突然すみません。ただ彼が、いつも残業を押し付けてないか?先輩に迷惑かけてないか?と気にしてて、会ってお礼が言いたいって…」
何だかこの状況って、頭の硬いアラサー女に皆が気を遣ってるって絵よね。
ここでグダグダ言ったら、益々そう思われちゃうのよね。
チラとヒジオを見れば、『ここはいいよ。と言ってあげるべき。』と説得するような表情で…腹が立つ。
でも腹を立てればいやなアラサー女、そのものだ。
「まぁ、仕事の話は終わったようだし、私は構わないですよ。」
同意を求めるようにこっちを向いたままの、表面的には客先であるヒジオに返事した。
「あっ、じゃあ私、彼を駅まで迎えに行きますね。」
と、優希ちゃんはいそいそと席を立って居なくなってしまった。