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きっかけは映画館
第17章 帰り道 part2
勢いで…ヒジオの家に…来ちゃった。
一人は寂しい。
遅くまで仕事をして、裕司のこと、結婚のことを考えずに済むようくたくたになるまで残って、帰って、寝るだけ…
考えても仕方ない…
でも、もし、たら、れば…と考える。
そして、自分が裕司にこだわっているのか、結婚にこだわっているのかも…わからなくなる。
ヒジオは…とりあえず、友達という位置付けにした。
ヒジオが本気なのは伝わる。でも、タイミングが良いから、付き合うってものでもない。
ヒジオのことを嫌いじゃないけど、好きかどうかがわからない。
寂しいから、都合がいいからと、ズルく使っているようで悪いと思った。
なのに、一人になりたくなくて…
はぁ…結局、私はヒジオを利用して、甘えているのだ。
「麻里絵ちゃん、ちょっと待ってて、俺も風呂入ってきちゃうから。」
ヒジオは、缶ビールと缶詰めのツマミで飲んでいた。
「麻里絵ちゃんの飲み物はこれね。」
ペットボトルの水が用意されていた。
家族が、新婚さんが住めるくらいの間取りのマンション。
バイク置き場の為とか、ヒジオは自分の生活を大事にしているとわかる。
男の人の家にしては、綺麗にしていて、物がない。
生活感のない部屋だった。
「はぁ、お待たせ。
軽く飲む?って言いたいところだけど、麻里絵ちゃんの嫌いなビールしかない。
だから、お水ね。お腹空いてる?」
って、ヒジオが見せるのは缶詰めのツマミと乾き物…
「ほとんど、寝に帰ってるようなもんだし、料理も苦手だから…」
隠さず言うヒジオは紳士なのだと思う。