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きっかけは映画館
第17章 帰り道 part2
ヒジオが、自分の家なのに、私にソファーを譲って、距離を保ってくれてたと気付く。
やっぱり、ヒジオは紳士だ。初日の痴漢行為は、あれはあれで必死だったのだ。
「麻里絵ちゃんさぁ、俺が言うことじゃないけど、ゆうじに連絡してみれば?
よく、話し合った方がいいんじゃない?
中途半端で…きちんと…ケジメがついてないんだよ。」
「でも、もう終わったから…」
「さっき、店出る時、結婚とか、ゆうじとかって、言ってたよ。」
「それって、優希ちゃんたちに…」
「聞かれてないよ。俺にしか聞こえないくらい小声だったから…
終わったかもしれないけど、自分の気持ちとか、ゆうじの気持ちとか、お互いはっきりぶつけてないから、こうなってるんじゃないの?」
ヒジオは、並んで座ってても、少し離れてて…
顔を合わせないように斜に構えてて…
隣に来たのは、顔を合わせない為だと、また、ヒジオの気遣いに気が付く。
「うん…気が向いたら…そうして…みる。」
俺が言うことじゃないって、ヒジオにしたら、元彼と連絡なんてとって欲しくないんだ。
でも、中途半端で、グラグラしている私が、仕事や生活に影響させてしまっていることを、心配してくれてる。
だから、約束は出来ないけれど、言葉を受け止めた。
「麻里絵ちゃんはさ、あの映画、ゆうじと自分に置き換えたんだろ?
転勤って壁があったから…
それを乗り越えられなかった。ヒロインや男役みたいに、純粋に愛だけに悩み、考えぬいて、結婚に至った二人が、羨ましくて泣いちゃったんだよな。」
っ…………
ヒジオにズバリ言い当てられて…
涙が…………